【ひきプラ】前に一歩踏み出すそのとき、安心して居場所や機会につながれるように

インタビュー

あなたは、ひきこもりの方が日本に「100万人以上」いると言われていることを知っていますか?

このような状況に対して、公的な支援や制度はまだまだ不十分な状態です。

年齢による支援の制限があったり、ひきこもり当事者の方のニーズとは異なる支援がされていることもあり、当事者が「一歩踏み出してみよう」と思っても、そこには高いハードルが存在しています。

このような状況の中、安心して居場所や機会につながれるよう、情報を提供しているサイトがあります。

それが、今回紹介させていただく「ひきプラ(ひきこもりプラットフォーム)」です。

インタビュイー:田島尊弘さん

ひきプラ(ひきこもりプラットフォーム)を運営。
身近にひきこもりの方がいたことをきっかけに活動を始め、現在はサイトを運営するに至る。

0.ひきプラについて

 

ひきこもりの当事者・経験者が「安心して居場所や機会へつながれること」を目指し、当事者会・ボランティア紹介を行っているサイトです。開催場所(都道府県)や開催期間、オンライン/オフライン別などで検索することができます。

「ひきプラ」ホームページ

1.ひきプラを立ち上げた経緯とは?

ー田島さん自身はひきこもりとどのような関わりがあったのでしょうか?

田島さん:私自身はひきこもりの当事者ではないのですが、身近にひきこもりの方がいました。そのため、「何か自分にできることはないだろうか?」ということを考えていて、色々と情報を集めるようになったんです。

ーひきこもりは最近ニュースでもよく取り上げられますよね。この前「8050問題」というのをニュースで観ました。

田島さん:以前はひきこもりは若者に多いと言われていましたが、最近になってようやく中高年の方にも多いことが分かってきました。そのこともあり、ひきこもりの分野は少し遅れていて、まだ制度自体が成り立ってないんです。今までの支援は若者を対象にしていたため39歳といった年齢制限があり、それ以降は支援が打ち切られて、行き場を失ってしまうことが往々にしてありました。あとは、相談に行きたいときも、ひきこもり専門の窓口というのはこれまであまり無く、支援にたどり着けない方も多くいたんです。そのことを知った時に、困っている人たちが必要な支援を受けられていない状況にすごく問題意識を感じました。

ー年齢を理由に支援が途切れてしまったり、そもそもつながりにくいというのはとても不安になりますし、制度を整えていく必要性を感じます。

田島さん:当事者の方から聞いたのですが、今まで通っていた支援機関で「○○さんはうちは今年で終わりだね」って言われてしまったそうです。そうすると、「今までは通えていたのにどうすればいいんだろう?」と行き場を失って…。そういうのってすごく悲しいですよね。

ーそのような経緯から立ち上げまでは、どのように進めていきましたか?

田島さん:そうはいっても制度や支援の枠組みを変えるというのはなかなか難しいですよね。そのため、まずは自分にできることから始めようと思って、ひきこもりの方々の声に触れる機会を増やしていったんです。その中で、当事者の方々から、何度も聞いた言葉がありました。

ーそれはどのような言葉だったのでしょうか?

田島さん:「居場所」「自己肯定感」です。多くの支援機関で行われているような「就労」を前提とした支援よりももっと前に居場所や自己肯定感を高められる機会がとても必要にされていると感じました。またちょうどその頃、あるイベントで登壇されていたひきこもり経験者の方から居場所の大切さをお聞きしたこともあり、その想いを確信することができました。

ー実際に、当事者の方の話を聞いていくことでわかったことが増えたんですね。

田島さん:そうですね。そして、もう1つ大きなきっかけになったのが、実際にある当事者会へ参加したことでした。私自身、行くまではとても緊張していたのですが、行ってみるとすごく居心地が良かったんです。1人で困っていたら主催者の方が気さくに話しかけてくれて、一方で深く関わり過ぎず適度な距離間で接してくれました。また、その場に居ることがつらくなったら別のスペースで休めるなど細かな配慮もされていて、安心してゆるやかに繋がれる場があったんです。「こういう居場所があるんだ」と、すごく感動しました。
そこで、参加されていた方に「この居場所をどうやって知ったんですか?」と聞いたら、「たまたま知り合いから紹介してもらいました」っておっしゃっていました。ちなみに、私がその居場所のことを知ったのはFacebookのイベントページです。その居場所はFacebook以外にネットでの情報発信をしていなかったので、私の場合はFacebookに気づかなければ、その参加者の場合も紹介してくれる人がいなければ、この場所には繋がれませんでした。こんな素敵な場所があるのに、情報に触れられないだけで繋がれないってもったいないと感じました。

ー情報を発信していかないと伝わらないのになかなか発信できていない状況は多いですよね。

田島さん:なので、「もっと居場所につながれるようにしたい」と思うようになりました。この件があってから全国に居場所がどれだけあるか、どんな風に情報を発信しているかを調べてみました。その結果、当時、50くらいの居場所があるとわかりました。ただ、情報の発信の仕方はさまざまで、ホームページやブログがあるところもあれば、SNSだけのところもありました。また、ホームページやブログがあったとしても、最新のイベント情報が載っていないから、今も開催されているかが問い合わせてみないと分からない。たとえ開催されていることがわかっても参加方法が載っていなかったり分かりにくいところが多かったんです。

ーそれはめちゃくちゃ不安で参加しにくいですね…。

見つけることができないし、見つけたとしても必要な情報が載っていない。これだと「繋がりたい」と思っても繋がれません。なので、情報をまとめて発信することができたらと思うようになりました。

2.ひきプラの取り組みとは?

ーそのような状況の中でひきプラでは何をしているのでしょうか??

田島さん:ひきプラのコンテンツは2つあり、1つは全国の居場所の情報を提供しています。

ー情報を提供するにあたって気を付けている点はありますか?

田島さん:自分に合った居場所・当事者会を探せるように工夫しています。情報が載っていても、その情報が薄いと行くことに不安を感じてしまいますよね。たとえば、どんな人が運営しているのか、どんな雰囲気なのか、自分も参加して良いのか、が分からないと、当事者の方も安心して足を運びづらいと思ったんです。

ー安心できないと行きづらいですね…。

田島さん:「前に踏み出してみよう」と思った時に、知らないところに出かける不安はものすごく大きいです。必要な情報が載っていれば自分も参加できるイベントということがわかって一歩踏み出しやすくなります。
ひきプラでは、当事者会の紹介ページとイベントページを2つに分け、まずは当事者会の紹介ページから見てもらえるように設計しています。当事者会の紹介ページには、「参加対象者」「会の雰囲気や特徴」「運営者」などの情報が載っており、そこで興味をもった会があれば、イベントページへ飛んで実際にイベントを見て、参加ボタンを押してもらう流れです。また、ひきプラのサイトに載っているだけでは気付かれないことも多いため、SNSでも積極的に発信をするようにしています。

ー自分に合った当事者会に参加できそうですね!ひきプラさんのTwitterを見ていても会の特徴が一言添えられていて、そういう工夫がされているとわかります!

田島さん:もう1つのコンテンツはボランティアの検索です。当事者の方と話をしている中でわかったのが、自己肯定感を高められるような機会を求められている方が多いということです。長期間ひきこもっている中で、周囲と自分を比較してしまうなど、徐々に自己肯定感が低くなってしまうことがあります。そんな中、少しでも自信をつけるきっかけがあれば自己肯定感を高められるのではないかと考えました。

ー自己肯定感を高めるきっかけというのがボランティアなのでしょうか?

田島さん:ほかにも色々あると思うのですが、そのうちの1つとしてボランティアを始めてみました。誰かのために自分にできることを自分のできる範囲で行って、それに対して「ありがとう」と承認してもらえることが、自己肯定感を高めることにつながるんじゃないかと思ったんです。また、ひきこもりに関する支援の多くは「就労」を前提にしています。就労も自己肯定感を高める方法の1つかもしれませんが、いきなり就労を課題設定されるとものすごくハードルが高いんです。

ー確かに、いきなり野放しにされるみたいですね…。

田島さん:まずは徐々にでも、自分のできる範囲で、何かに挑戦できる機会をつくれないかなと思っています。

ー他者との交流が少ないと承認される機会も少ないでしょうし、ボランティアは自己肯定感を高める機会に繋がりそうですね。

田島さん:2つのコンテンツのどちらにも共通してるのは、「前に踏み出そう」と思った時に、そういう場所や機会に繋がれるということ。ひきプラが目指しているのは、解決策の提示ではなくて、誰もが当たり前に場や機会につながれるように選択肢を増やすことなんです。

ー選択肢を増やすことで新たな道が見つかるかもしれませんね。ちなみに、新しい取り組みの「視覚障がい者遠隔サポート」のボランティアとはどういったものですか?

視覚障害のある方の「手紙を代わりに読んで欲しい」「探し物が見つからない」といった困りごとについて、自宅などの遠隔からオンラインでサポートをするというボランティアです。 実はボランティアについては、どんなものが良いか、ずっと悩んでいました。
そもそも普通のボランティアを紹介するのでは意味がないと思っていて、ボランティアを募集する側もひきこもりについて理解のある状態でないと続きません。また、ただ何かの作業をするだけのボランティアではなく、誰かのために自分のできることを行い、その結果、「ありがとう」と直接言われるようなコミュニケーションが発生しないと自己肯定感を高められないと考えていました。

ー「ありがとう!」と感謝の言葉を貰えると、とても自信になりますね!

田島さん:そんな時に、たまたま見ていたニュースで取り上げられていたのが、視覚障害者の遠隔サポートサービスを提供している株式会社リモートアシストさんでした。サービスそのものに共感したのはもちろんですが、自分のできる範囲で困っている方のサポートを行い、その結果「ありがとう」という言葉が直接返ってくる。自分が考えていたことに、とても近いと感じました。そこで、リモートアシストさんにすぐにメールを送って、2ヶ月くらい一緒に考えて実現できたんです。

実際に、このボランティアをされている方はいるのですか?

田島さん:まだなんです。こういう取り組みをやっていること自体を知られていないところがあるのと、ひきこもりの方が全員パソコンを持っているわけではないので、なかなかスタートできていません。
ただ、あるイベントに参加したときに「こういうボランティアを募集しているけど興味ありますか?」と話をしてみたら、やってみたいという方もいたので、より多くの方に知ってもらえれば、少しずつ普及していくと思っています。そういうこともあって自分たちの活動やボランティアの可能性をもっと広げていきたいです。

3.これからのひきプラ

ー最後に、これからの目標を聞かせてください!

もっと選択肢を増していきたいです。「居場所」と「ボランティア」という切り口でもやるべきことはたくさんあると思っています。居場所では、まだまだその数そのものが足りてないと感じており、特に当事者会や自助グループなど当事者が居場所を立ち上げやすい組みを作っていきたいです。また、各自治体には公的機関が主体の居場所もあるのですが、ここにつながるためのハードルも高いので、いずれつながりやすい状況を作っていけたらと思っています。
また、ボランティアは今は1つだけしか募集がないですが、たくさんの種類があれば自分にあったものを選べるようになると思っています。
そのほか、自己肯定感を高めるにはボランティア以外の方法もあるのでそういう選択肢もさらに増やしていきたいです。
ひきこもりを理由に選択肢が狭められることが無いよう、誰もが必要な時に当たり前に場や機会につながれる、そんな状況を作っていきたいです。

さいごに

今回は、ひきこもりの方の選択肢を増やす活動をしている「ひきプラ(ひきこもりプラットフォーム」の田島さんをインタビューさせていただきました。

今回のインタビューを通して、ひきこもりの方に対する多くの支援が当事者のニーズと離れており、「居場所」と「自己肯定感を高める機会」を設けていくことが必要とわかりました。

もし、あなたの周りに、ひきこもりの方がいたら無理に外に出したり働くことを強要するのではなく、まずはそっと寄り添ってほしい。
そして、小さなことでも自信がつけられる機会を提供できたらいいですね。

ひきプラの情報はこちらから
ホームページ→「ひきプラ」
Twitter→「@hikipla」

田島さんをインタビューしたおそとのTwitter
Twitter→「osoto0408」

次回以降の他のインタビューも決定しています。
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※本記事で使用している写真はすべてご本人様の許可を得て使用させていただいております。